関西華僑華人僑団の現状と今後の展望大阪華僑総会 会長劉中耀

 昨年中国の政治協商会議の副主席李海峰氏が来阪された。その折大阪総領事館の要請で「関西地区の華僑華人の僑団の現状と今後の展望」についてレポートをまとめ李副主席との座談会で発表するよう求められた。
 本来こうしたレポートは領事館が自らまとめて祖国に送るのが筋だとも思ったが、大阪華僑総会にとっても把握しておくのも良いと思いまとめてみた。

 中国駐大阪総領事館の管轄は近畿地方の2府4県(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)中国地方4県(岡山県・広島県・島根県・鳥取県)四国地方4県(香川県・徳島県・愛媛県・高知県)など合計2府12県にもわたる広大な地域になっている。
 その中で中国人の数は日本の法務省入国管理局の統計によると合計14万人超になっているが、この中にはすでに帰化して日本国籍を取得した「華人」は含まれていないし、その実数はわからない。
 この地域では中国人の多くは比較的大都市を有する大阪府に5万人超・兵庫県に2万6千人超・京都府と広島県・岡山県などに1万人超が居住している
 もちろん中国人が多数居住している地域ではその数に比例して帰化した中国人つまり華人も多くいることになっている。
 その数は統計がないので、推計するしかない。華人を含めた数となるとつまり中国系の総数は入国管理事務所の統計の約1.4倍位になるのではと思う。
 日本で安定的に、自由に外国人が職業を選択するには多くの障害があり特に永住資格を取得するのは最低10年以上法的な違反などが無く過ごしてやっとかなえられ。
 しかし日本国籍を取得する帰化という方法を選んで申請すると滞在5年程度で許可が得られ。つまり永住資格を取って中国人として暮らすより、帰化して日本人になる方がたやすい。
 そこで、華人がどんどん増えることとなる。
 今関西地区の大都市大阪市、神戸市、京都市にはそれぞれ中日国交正常化以前つまり抗日戦争に勝利した時に現在の名称ではないが華僑総会が設立されて華僑の正当な権益を守る活動をしてきた。
 特に中華人民共和国成立以降、国交正常化が行われる前には華僑の帰国探親事業などを積極的に進めてきた。
 また祖国政府と日本政府との橋渡し的な活動を日本の民主的政党などと一緒に進めてきた。  しかしこの3都市の華僑総会もそれぞれその都市環境が異なり、その会員の出身地域もそれぞれ大きく違う。会員の数も異なる。
 兵庫県の神戸華僑総会は日本において最も歴史がある民族学校神戸中華同文学校があることが大きく影響して会員の次世代の国語能力も高く、比較的居住区域が近く、まとまりやすい地域ではある。
 しかしどこの地域でも若い世代の婚姻の相手は日本人であることが多いのが現状である。
 1985年の日本の国籍法が変わり夫婦のいずれかが日本人であるとその子弟は自動的に日本国籍となる。
 つまり華僑ではなくなるということである。
 比較的まとまりやすいとされる神戸地区でも年々会員の高齢化と若者の中国離れは止めようがないのが現実である。
 次に京都華僑総会はもともと福建省出身者が多い地区でその日本在住歴が長いこともあって中国語の離せない人がほとんどでであった。しかし最近新華僑の加入が増えて、新しい潮流がうまれてきつつある。
 さて最大の都市である大阪地区にある大阪華僑総会は会員の居住している地域が広範囲に及ぶためなかなか会員同士の交流を進めるのが難しい。
 そこで出身地域が同じである同郷会が下部組織にあり、主なものは江蘇同郷会・北省同郷会・福建同郷会などが歴史をもっており、それぞれでまとまりを見せている。
 このことは他の京都・神戸地区でも同様の傾向であるが次世代への継承はどこの会でも難しそうである。
 さて新華僑の団体としては2002年に設立された西日本新華僑華人連合会が最も大きい組織で下部組織に16団体が加入している。今年懸案事項の事務所も会長の会社に開設されて今後の展望が期待されている。
 京阪神地区以外では岡山地区と広島地区に1万人超の中国人が居住しているが、岡山華僑華人総会が新・老華僑華人がまとまりを見せている。またこの地域には伝統的に親中国の日本人もおおく輩出しているのも有利な点である。
 広島地区は広島県華僑華人総会という名称の団体があり何年も争っている。こうした問題は四国地域でも各県に2つ以上の新華僑の団体が存在し、まとまりを欠いている。
 京阪神地区は大阪華僑総会・神戸華僑総会・京都華僑総会・西日本新華僑華人聯合会の4団体が協力して、大阪市・大阪総領事館の後援を得て、中秋明月祭という大きな祭りを7年連続で開催して、日本の市民にも歓迎されている。
 またこの4団体は毎年春節の時期には持ち回りで春節の懇親宴会を開催している。
 老華僑の団体は会員の高齢化や次世代の日本人化は防ぎようのない傾向は今後も続くであろうことから、多数を占める新華僑の参加・加入が急務であり、必然であると考えられる。
 今、新華僑の家庭でも子弟の華文教育の必要性は大きな問題になっていて、老華僑の多くが中国語を話せないという現状は、遠からず彼らの問題となることを憂慮している。
 また、いま華僑総会等で行っている親族関係の証明なども、30年超の日本滞在の新華僑についても、中国国内の戸籍制度が不備なため国内居住の親族関係について把握できていないので問題となるだろう。